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【リ協コラム】02新技術研究部会 「 けい 酸塩系 表面含浸材 」勉強会

    
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【リ協コラム】02新技術研究部会 「 けい 酸塩系 表面含浸材 」勉強会

少し昔の話になりますが、昨年行われました新技術研究部会の様子をお届けいたします。

 

今回の部会の概要は以下の通りです。

<テーマ>

けい酸塩系表面含浸材

<製品名>

セラグリーン

<ゲスト>

光が丘興産株式会社:野口昌克氏、坂本大輔氏、湯浅恵氏

株式会社グリーンドゥ:松浦照男氏、安田哲也氏

<参加者>

部会メンバー

 

セラグリーンの総代理店である光が丘興産株式会社およびセラグリーンの製造・販売・施工を行う株式会社グリーンドゥの各氏をお招きしお話を伺いました。セラグリーンの開発に携わって30年の㈱グリーンドゥ・松浦氏を中心に製品の特長や施工事例についてご説明頂き、その後部会メンバーとゲストの間で質疑応答を行いました。

勉強会の様子 立って説明しているのが松浦氏(㈱グリーンドゥ)
 

<内容>

・けい酸塩系表面含浸材

けい酸塩系表面含浸材とは、けい酸塩(けい酸リチウム・けい酸ナトリウム・けい酸カリウム)を主成分とした材料で、コンクリート構造物の耐久性の向上を目的にその表面に適用されます。コンクリートの表面に塗布含浸させるとコンクリート内の空隙に入り込み、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応してゲルを形成または成分の乾燥固化により、空隙を充填することでコンクリート表層を緻密化する性能をもっています。

けい酸塩系表面含浸材には、機能向上や機能付加を目的として添加剤や副成分を加えたものがあります。添加剤とは、主成分の役割を助けるもの(界面活性剤や反応促進材など)のことで、副成分とは、別の要素(撥水性や充填率向上など)を付加するために用いるもの(撥水基や超微粒子固化物など)のことです。この副成分を加えたけい酸塩系表面含浸材は「副成分複合型」と称されています。

また、けい酸塩系表面含浸材は、「固化型」と「反応型」に分類されます。コンクリート中の空隙に入り込んだ主成分(けい酸塩)が乾燥固化した際に、固化物が再溶解せず、充填したままの状態を維持する設計のものが「固化型」、水が供給されるたびに固化物が水に溶け水酸化カルシウムと反応(ゲル化)し空隙充填を繰り返すのが「反応型」です。

 

・セラグリーン

製品として取り上げた「セラグリーン」は、株式会社グリーンドゥが製造するけい酸塩系無機質コーティング材で、1989年(平成元年)に商品化されています。「セラグリーン」には様々な材料設計のものがあり、塗布含浸させることで表層の緻密化・高耐久化、防汚効果がある製品です。

「セラグリーン」は、全てがいわゆるけい酸塩系表面含浸材にカテゴライズされるわけではありませんが、主力商品の「セラ5000親水」と「セラグリーンNK」は本来のけい酸塩系表面含浸材に該当し、先の分類では「副成分複合型」の「固化型」けい酸塩系表面含浸材に該当するとされています。

「セラグリーン」には、使用用途に合わせていくつかのラインナップがあります。表面に含浸するタイプ(セラ5000・セラ6500・セラグリーンNK)の他に、造膜設計になっているタイプ(セラ8000・セラ8500)や金属用防錆剤(セラグリーンZ)などがあります。

セラ5000には、コンクリートだけでなく天然石張り面やタイル張り面(タイル目地に浸透)にも適用可能な製品や、壁面のみならず床面に用いることで防滑・防汚効果を発揮する設計になっている製品もあります。

「セラグリーン」が「固化型」を採用している理由は、成分の結晶が再溶解しないため表面の改質(緻密化)効果が安定継続的に期待できるところにあります。また、再溶解しない「固化型」設計の成分に色を付けることで、塗布したもの(コンクリート等)に着色することが可能となります。。これによりコンクリート表面の緻密化やひび割れ部の充填を図るとともに表面化粧保護ができるカラーコーティング材としても使用できるというわけです。

「セラグリーン」の主力商品であるセラ5000には、「撥水/親水/疎水」の3つのタイプがあります。親水タイプに、添加物を加えることで疎水タイプや撥水タイプを作っており、それぞれ目的によって使い分けが提案されています。

・[親水タイプ]       目的:コンクリート表面の改質保護、劣化抑制、防汚効果

・[疎水タイプ]       目的:コンクリートのモルタル補修跡の雨掛りによる目立ち補正

・[撥水タイプ]       目的:雨掛り部の濡れ色抑制、雨水などが溜まる箇所への施工

 

下の図は、セラ5000の各タイプを塗布した見本板に水を掛けたときの画像です。表面の濡れ色には違いが見られます。皆さんはどれがどのタイプだと思いますか。

 

正解は、左から<親水・疎水・撥水>です。濡れ色発現の強さは、親水タイプ>撥水タイプ>疎水タイプの順になっています。言葉のイメージでは疎水と撥水が逆のように思えますが、疎水タイプは、膜を形成する設計にあるため、表面に水が入りにくくなっていることから濡れ色が最も弱く現れます。

撥水タイプは、呼吸性(水蒸気の発散性能)をもたせるため、表層には撥水粒子間に隙間ができています。この隙間に水が毛細管現象で入り込み、逆に浸透した水は表層の緻密化した層で(呼吸性はあるものの)蒸発が阻害されるため乾燥が遅れ、濡れ色が現れる結果となっています(撥水タイプには無呼吸型(微造膜設計)もあり水が溜まる箇所にはそちらを使用します)。

ただし、撥水タイプは、疎水タイプに比べより多くの撥水剤が基材内に含浸し改質層を形成することから、(表面のみではなく)改質層としての撥水機能はより長く維持されます。

 

・まとめ

今回、「けい酸塩系表面含浸材」の概要と「セラグリーン」の特徴について知ることができました。ひとくちに「けい酸塩系表面含浸材」といっても材料設計により様々に工夫されていることや、「セラグリーン」では同じ商品名(セラ5000)であっても添加剤により効果が異なり、その効果の違いを濡れ色の違いとして目に見える形で理解できたことは非常に勉強になりました。

また、「けい酸塩系表面含浸材」の範疇ではないものの(セラ6500:けい酸塩系ハイブリット表面化粧材)、不溶解結晶により含浸させつつ色付を行うという材料は初耳で、ぜひ、実物の仕上がりを見てみたいと感じました。

一方で、リ協が主な守備範囲とする既設の共同住宅では、コンクリートやモルタルの素地に手を掛けるというケースはかなり限られるため、「けい酸塩系表面含浸材」には、これまでお目にかかる機会が少なかったように思います。実際に施工実績も新築物件や公共・商業施設の改修工事が多いようです。

とはいえ様々な材料・工法を理解しておくことは大切ですし、松浦氏が推奨していたタイル張り面への施工(セラ5000タイル)のみならず、床の石材への適用(セラ5000-92)などは今後使用を検討する機会が訪れる可能性を感じます。試験施工や他の同様の効果をうたう商品との違いを把握し、きちんとした判断ができるよう整理することで理解を深めていきたいと思います。(※セラ5000-92はアルコキシド金属塩系の浸透造膜タイプ材料)

 

いかがでしたでしょうか。「セラグリーン」にご興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、光が丘興産株式会社または株式会社グリーンドゥにお問合せください。

勉強会終了後も質疑は続く(左から野口氏(光が丘興産㈱)、松浦氏、安田氏(㈱グリーンドゥ)、塚部氏(リ協副会長))

 

※※※ 新技術研究部会部会長・三條場氏コメント ※※※
御存知の方も多いものとは考えますが、コンクリート構造物の長寿命化等を目的とした「表面含浸材」には大きく分けて、「珪酸塩系」と「シラン系」に分別されています。今回は其の内、前者「珪酸塩系」に注視して研究を実施致しました。此の手の範疇の情報は簡単にインターネット等で閲覧する事が出来ます。
処が、如何に詐欺紛いの情報に溢れているか‥「眉唾」どころか、「顔面びしゃびしゃ」の情報もある様です。今回、研究会での成果は、材料開発者自身が参加され、普通は喋らない「材料設計上の内緒の話」を悟る事が出来た点にあると云う事です。故に此の範疇では、かなり本当の話・真意が得られたものと自負しています。

まあ生の場での理解を、「本当の事を正しく理解したい」と考える方は是非、我が部会を参加される事を希望致します。では、部会において御会い致しましょう。
光が丘興産株式会社 商事第二部

株式会社グリーンドゥ

 

<参考文献>

日本土木学会「けい酸塩系表面含浸工法の設計施工指針(案)

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